乾癬は炎症性角化症に分類される、慢性の皮膚疾患です。経過が長く、完治が難しい皮膚疾患でもあります。乾癬はけしてまれな病気でなく、発症のしやすさに個人差はありますが、誰にでも起こりうる疾患です。
乾癬は頭や顔、体や手足など、全身どこの皮膚にでも発症します。乾癬の皮疹は皮膚に境界明瞭な赤い斑ができ、その上に白いふけのような鱗屑が覆うように発生します。
乾癬を発症すると皮膚のターンオーバーが通常より早いサイクルで行われるようになるため、不完全な皮膚が次々に積み重ねられていき、厚くなった皮膚の最上部の角質が鱗屑となって、体からポロポロと落ちていきます。
乾癬はたむし(体部白癬)など皮膚の真菌症との鑑別が問題になる場合がありますが、真菌症のように他の人に感染する病気ではありません。
乾癬は多少のかゆみをともなうことが多いです。
外から力が加わった部分に新しい乾癬の皮疹ができやすく、かゆいからといって掻いたりするとそこに新しい乾癬疹ができやすくなります。また机に肘をつく癖のある人は肘の部分に、ベルトで圧迫される腹部や、座ることで体圧のかかるおしりに乾癬疹ができたりもします。
乾癬には、一般的によく見られ皮膚症状が主体の尋常性乾癬の他に、膿疱性乾癬や、関節の合併症をともなうものなどがあります。
乾癬の原因はまだわかっていません。
しかしながら、もともと生まれつき乾癬を発症しやすい素因を持つ人に、ストレスや生活習慣や食習慣・感染症などの何らかの発症要因が加わって、発症すると考えられています。例えば高カロリー高脂肪食は、乾癬の発症リスクのひとつと考えられています。
【外用療法】
乾癬は皮疹が体の広範囲に及ぶことが多く、また頭や顔、体や手足など、皮膚の厚さの異なるあちこちの部位に見られるため、場所によって外用薬を使い分ける必要があります。
漫然と使用すると効果が落ちたり、副作用が出やすくなるので、必ず定期的に皮膚科を受診し、医師の指示に従って根気よく外用してください。
・ステロイド外用薬
炎症を抑え、皮膚炎を改善します。外用による効果は比較的早く見られます。
副作用としては、外用した部位の抵抗力が落ち感染に弱くなることや、長期間使い続けると部位によっては皮膚が薄くなったりすることがあります。
このため外用する場所によって、塗布するステロイド外用薬の種類を変える必要があります。
・活性型ビタミンD3外用薬
皮膚のターンオーバーを正常化し、厚くなった角質を元に戻す働きをします。
ステロイド外用薬のような皮膚が薄くなったり感染に弱くなったりするような副作用がないため、同じ場所に長期間使用しやすいのですが、ステロイド外用薬と較べると、効果が感じられるまでに少し時間がかかります。
また塗ると少し刺激感があるため、顔には使用できない製剤があります。
基本的には副作用の少ない外用薬なのですが、ビタミンD3はカルシウム代謝に関係するため、特に腎機能が低下しているような方や高齢者では、広範囲に外用すると血中のカルシウムの値に影響が出ることがあるので、注意が必要です。
【内服治療】
・抗アレルギー薬
かゆみを軽減し炎症を抑えるために、外用薬と併用して抗アレルギー薬が内服処方されることがあります。
・自己免疫抑制剤・エトレチナート
外用薬だけではなかなか改善が見られない場合、シクロスポリンなどの自己免疫抑制剤や、ビタミンAに構造がよく似たエトレチナートの内服が使用されることがあります。
外用薬だけではコントロールできない乾癬にも効果を発揮しますが、腎機能障害や肝機能障害などのリスクがあるため、定期的な採血による副作用のチェックが必要です。
【光線療法】
紫外線を照射することによって、乾癬を治療します。専用の機器が必要で、また効果を上げるためには週1〜2回以上通院する必要があります。外用薬だけではコントロールできない場合や、内服治療ができない場合などに選択されます。
【生物学的製剤】
乾癬に対しては主に点滴や注射で投与されます。従来の治療法では改善が困難だった乾癬や重症の乾癬に対して行われます。
副作用としては免疫力低下などがあり、また医療費が高く高額治療になるため、生物学的製剤を扱う資格を持った検査設備などの整った病院で主に治療が行われています。